あそびのもり ONLINE

日本中から注目が
集まる新球場に
最大規模あそび場
リポビタンキッズ PLAYLOT by BørneLund
オープン

北海道・北広島市にオープンしたばかりの「北海道ボールパークFビレッジ」。規模もコンセプトもすべてが規格外の野球場はどのように誕生したのでしょう。キーパーソンのお二人に、フォトジャーナリストの中西あゆみさんがお話を伺いました。

左・前沢 賢(まえざわ けん)

株式会社ファイターズ
スポーツ&エンターテイメント
取締役 事業統轄本部長

1974年5月4日東京生まれ。
この球場は自分の子どもを育てて
いるような感覚で、現在ようやく
小学校に上がったところだと語る。

右・三谷 仁志(みたに ひとし)

株式会社ファイターズ
スポーツ&エンターテイメント
取締役 事業統轄副本部長

1973年3月8日京都生まれ。
京都、イラン、アメリカ各地、千葉、
東京と現在の北海道を含め
全 15ヶ所で暮らした経験を持つ。

「顔の正面に子どもの
あそび場」を

多くの人たちをワクワクそわそわさせてきた北海道日本ハムファイターズの新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」がこの3月ついにオープンした。

新たな本拠地となった北広島市に建設された「北海道ボールパークFビレッジ」の場内では、360度自由に回遊しながらどこからでも野球観戦ができるコンコースに、高さ約70mのガラス壁からやわらかな光が差し込む。ホームベースが日本一観客席に近い圧倒的な臨場感。レフト側にはフィールドが一望できる温泉やサウナ、ダルビッシュ有選手と大谷翔平選手をコンセプトとした「DARVISH&OHTANI SUITE」に宿泊できるホテルなどがあるTOWER 11(タワー・イレブン)が話題を呼ぶ。ホームベースの真正面にはスコアボードではなくクラフトビール醸造レストランがあり、観客席から好きなだけ行き来できるこだわりグルメは約50店舗もある。野球以外でも存分に楽しむことができる世界初の試みや驚くべき工夫が凝らされ、これまでの〝野球場〟の概念を大きく覆した。

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1コンコース壁面に大きく描かれた「ダルビッシュ有選手と大谷翔平選手」(By OVERALLs)は既にフォトスポットとなっている。

2高さ約70mのガラス壁から自然光が差し込むエスコンフィールド。

3TOWER 11の4階 tower eleven hotel 内「DARVISH&OHTANI SUITE」には二人がファイターズ時代に着ていたユニホームが飾られている。当時の二人の背番号「11」が施設名の由来だそうだ。

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1コンコース壁面に大きく描かれた「ダルビッシュ有選手と大谷翔平選手」(By OVERALLs)は既にフォトスポットとなっている。

2高さ約70mのガラス壁から自然光が差し込むエスコンフィールド。

3TOWER 11の4階 tower eleven hotel 内「DARVISH&OHTANI SUITE」には二人がファイターズ時代に着ていたユニホームが飾られている。当時の二人の背番号「11」が施設名の由来だそうだ。

ライト側には、球場を訪れる子どもたちのために「リポビタンキッズ PLAYLOT by BørneLund」が作られた。別世界へと誘う1900㎡のあそび場は、ボーネルンドの直営施設では最大規模。試合がない日も一年中、雪や寒さを気にせず親子がゆったり過ごすことができる。カフェスペースもある屋内には、色鮮やかであるが落ち着いた雰囲気を醸し出す北欧調デザインが施される。幅広い年齢層とインクルーシブであることにこだわり、0歳から12歳までの多様な子どもたちが思い切り体を動かしたり、安心してクリエイティブなあそびに没頭できる仕掛けが数多く作り込まれている。屋外にはよりチャレンジングな大型遊具が設置され、高学年の子どもたちも歓声をあげる。

新球場建設にあたり、「野球をやるフィールドの次に決まったのが子どものあそび場が必要だということだった」というほど子どもの居場所を重要視したと、ファイターズ スポーツ&エンターテイメントの三谷仁志(みたにひとし)取締役 事業統轄副本部長(50歳)は言う。

「そもそも我々は、球場のグラスウォール側(センター奥にある天井まで続くガラスの壁)が『正面』だと考えているので」と三谷さん。「顔の正面」、つまり一番いい場所に「子どものあそび場があるのが適している」と考えたそうだ。グラスウォール外側の球場正面に広がるエリアは、「北広島駅から車で来たときに右側に一番よく見える場所」だという。ここには、ボーネルンドのあそび場だけでなく、ファイターズと提携した保育を行う認定こども園や、子ども専用の「Fプレイフィールド」も作られた。人工芝が敷かれたこのミニフィールドでは競技性は一切関係ない。園児をはじめ、近所の子どもたちも、誰でも無料で自由に遊ぶことができる。

「子どもたちが本当に大切だということが、エリアを見ただけでわかるようにしたかった」。同じくファイターズ スポーツ&エンターテイメントの前沢賢(まえざわけん)取締役 事業統轄本部長(49歳)は言う。三谷さんと二人三脚、このボールパークをゼロからつくりあげた立役者の一人だ。こだわりは球場内で提供する食べものにもあるという。「子どもたちに添加物満載のお弁当を食べさせたくない」という思いから、直火を使えるようにしたそうだ。

「今の日本社会において、子どもをどう大切に扱っていくのか。子どもを育てていく環境を社会で作らなくてはならないと言っておきながら、実際にはできていない現状があります。海外でも意外と、子どものあそび場はデッドスペースに作ろうという発想が多かった。ですが、後から作ると後付けになってしまう。せっかく新設で球場を作るとなった時に何をするか。考え方の主従が間違っているものをもう一回見直そうというなかで、子どもをトップランク、ハイランクに位置づけることになりました」と三谷さん。そういう姿勢を「地域の人たちや、ファイターズに対してシンパシーを感じている人が見て取ってくれたら。子どもを大切にする社会をつくろうというメッセージを感じ、自分もそういうふうにしようと思ってもらえるんじゃないか」。そんな思いが込められている。

「街づくりという
ボールパーク展開が
一番のモチベーション」

ボールパーク作りは単なる野球場建設ではないと二人は口を揃える。

「日本のスポーツファシリティのレベルを上げていく」という揺るぎない信念の元、そこを起点とした「街づくり」という、より大きな構想を掲げている。
スポーツの試合を見に行くだけの「シングルパーパスではなく、もう少し滞留時間を長く、いずれは定住人口を作っていく。日本ではこの30年、アメリカなどに比べてスポーツエンターテイメントとしてお客さんが来て楽しむ舞台装置でもある球場のレベルが上がってこなかった。ここで大いなる飛躍を遂げたいという思いがある」と三谷さん。

「アメリカを含めた海外のレベル感、さらにその上を行くことが、街づくりということ。そういう意味でのこのボールパーク展開が今の一番のモチベーション」だと三谷さんは語る。すでに球場前に新駅の建設も決まっている。徐々に移り住んでいる人も増えているそうだ。

「このエリアだけでも全体に32ヘクタールあります。このプロジェクトはもう終わりがないですね。32ヘクタールを飛び越して、すでに北広島駅西口の開発も進んでいます。どんどん広がって、派生していくものだと思います。試合で言うとまだ1イニング目とか2イニング目なんです」と前沢さん。

「世界がまだ見ぬボールパーク」 ||場内に掲げられたその言葉には、ここを核とした新たな「街づくり」とその地域全体の活性化、ひいては社会全体の発展への貢献に、強い志と思いが込められている。

「リポビタンキッズ PLAYLOT by BørneLund」の屋外に設置された超大型遊具からは親子の歓声が聞こえる。

「そんなの
できるわけないでしょ」
って言われてきて今日がある

過去に例のないボールパークをつくるにあたり「具体的に動き出したのは8年前」。以来プロジェクトを牽引してきた前沢さんと三谷さん。
「『そんなのできるわけないでしょ』って言われてきて今日があって。できるとかできないとか色々言ってくる人はいるけれど、基本的に可能性は無限大。大人が本気で作ったらこういう球場ができるんだ。信念さえあればそこに近づける。獲得できるかどうかはさておき、確実に近づけるんだってことは子どもたちには知って欲しかったし、知らしめたかった」と前沢さんは言う。

野球を好きかどうかというよりも、まずはこのエリアに来てもらうことが大事。ご家族連れでも、ご夫婦だけでも、子どもだけでも楽しめるようなエリアがいたるところにあります。この北海道の自然の中で、こういう場所は日本にはなかなかない。試合を見る見ないにかかわらず、北海道に来たら是非立ち寄って欲しいです」
「これじゃなきゃいけないと言う既成概念みたいなものを少しでも多く取っ払えたらというのがベースにあります」と三谷さんも言う。「根底に流れている意気込みや気概、思いを理解してもらい、ここで働く人にも訪れる人にも、是非自由に楽しんでもらいたい。子育てに奮闘中のお母さんたちにとっても、息抜きの場になればうれしいです

誰も成し遂げられなかったことをやってのけた〝人〟の力で誕生した、進化を遂げた野球場は、今、そのさまざまな要素から沸き起こるシナジーと高揚感、ポジティブなエネルギーに満ち溢れている。異彩の存在感を放つ「北海道ボールパークFビレッジ」の堂々たる現在の姿は、多くの人々を感動と共感の渦に巻き込むことだろう。そこから広がっていく未来はきっと想像を遥かに超えた世界に違いない。

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1カフェもある「ギャザリング・フォレスト」エリアのシンボルは天井まで届く。

2年齢を問わず大人気な回転する遊具からは大きな笑い声が響く。

3「ディスカバリー・タウン」には集中力を高めるあそびが満載。

4北海道ボールパーク「正面」の左手には、ボーネルンドのあそび場だけでなく、子ども用のプレイフィールドが作られている。

DATAリポビタンキッズ PLAYLOT by BørneLund

北海道北広島市Fビレッジ1 ES CON FIELD HOKKAIDO 1F FIELD LEVEL
営業時間10:00~19:00(あそび場最終受付18:30)
※ナイター試合開催日は10:00~21:00(あそび場最終受付20:30)
利用料最初の30分子ども(6か月~12歳)900円、大人900円(試合日は1,400円)
PLAYLOT 1DAYパス(何度でも入退場可) 子ども1,800円、大人900円(試合日は1,400円)
※規定枚数に到達次第、販売終了 「1DAYパス」は『Fチケ』(北海道日本ハムファイターズ公式オンラインチケットサイト)にて事前購入できます

[ 取材・文・写真 ] 中西あゆみ
フォトジャーナリスト・ドキュメンタリー写真家・映像作家。東京とジャカルタを拠点に家族やコミュニティ、子どもたちを取材。多くの人々に援助の手を差し伸べるパンクバンドの長編ドキュメンタリー映画制作を始めて15年、シリーズ化して更新中。同作品は日本、インドネシア、ドイツ、イタリアなどで公開されている。

この記事は、あそびのもりVol.60 Summer/Autumn 2023の記事です。