ランチ・ペダーソンさんと息子のドレイクくん(7)とデレックくん(5)。オークランドのホアキン・ミラー公園にて。
兄のドレイクくんを追いかけるデレックくん。オークランドのホアキン・ミラー公園にて。
お兄ちゃんを追いかけて池の周りを走っている時に転んでしまったデレックくんを慰めるランチさんとドレイクくん。
写真撮影のためポーズするドレイクくんと変顔をする弟のデレックくん。
ドレイクくんが通う小学校校庭で遊ぶドレイクくんとデレックくん兄弟。この校庭は、放課後、地元の子どもたちに解放されている。
兄弟は高いところに登るのが大好き。全然怖くないのだと二人は言う。
お兄ちゃんが通う小学校校庭のうんていに果敢に挑戦するデレックくん。
急に御機嫌斜めになったデレックくんを抱きしめるランチさん。
オークランド市に自宅を購入し、サンフランシスコから引っ越したペダーソン夫妻。現在、二人の息子、ドレイクくん(7)とデレックくん(5)を育て、自分たちの選択は正しかったと感じています。
妻のランチさんは、デジタル・プロジェクトマネージャーとして働いています。子育て中の彼女には、週の三日はオフィスで、二日自宅で働く柔軟なスケジュールが提供されています。 夫のクリスさんはワインの営業マンで出張が多いのですが、彼の仕事も柔軟なスケジュールを組めるため、自宅で仕事をしながら子どもの世話に時間を割くことができます。
8年前、夫妻はオークランドのローレル地区に家を買い、サンフランシスコから引っ越して来ました。家を所有し、前よりも広いスペースを手に入れたのです。引っ越してすぐに二人は予想外のサプライズを受け取りました。
「私たちはサンフランシスコに住んでいたのですが、オークランドに家を買って、それから妊娠に気付いたんです」とランチさん。
夫妻は、オークランドの文化的多様性を高く評価しています。クリスさんはヨーロッパ系アメリカ人、ランチさんはベトナム系アメリカ人であり、ハーフの子どもたちと共に、この地で暮らすのは落ち着くと言います。
一家の暮らす家は、オークランドの中でも過渡期にある地域にあります。この地域では、かつて犯罪と暴力がはびこっていました。公立学校の学力ランクの評価は低く、夫妻は子どもたちを近所の学校には行かせたくありませんでした。
「過渡期にある地域に住んで学校のことを心配するのは、解決するまで本当にストレスでした。考慮すべきことがたくさんありました。家を売って、より安全な(そして良い公立学校があるが白人が大多数の)マリン郡かどこかに引っ越した方が良いのか?でもそうはしたくないのです。私たちはオークランドの多様性が好きなんです。サンフランシスコに住めないなら、次の選択はここでした。この街をとても気に入っています」。ランチさんは言います。
幸運にも、夫妻は希望校を選択することができました。オークランドの学区には、 希望の公立学校に抽選制で子どもを入学させることができるシステムがあるため、保護者は、市内にあるどの公立学校へも入学を希望することができます。
オークランドの公立学校抽選システムは競争率が高く、第一希望どころか第二希望も通らない可能性があります。しかしこのシステムにより、保護者は子どもをより良い学校に通わせるチャンスを得ます。
ランチさんは、オークランドの抽選システムがとても有益だと感じています。子どもたちは居住地域に関わらず、良い教育を受けるチャンスを得られるからです。
夫妻は、学校の評価、ロケーション、そして大規模で活発なPTA(父母と教師の会)があるかどうかを基準にドレイクくんの学校を選びました。
「11月に学校の見学会があります。1月に申請を開始し、5校まで希望を出すことができます。その後3月に通知が来ます。割り当てられた学校に不満があったら、不服を申し立てることができます」。ランチさんは言います。
クロッカー・ハイランズ公立小学校( http://crockerschool.org )は希望条件に合っていました。この小学校は自宅の学区外ではトップ2か3と言われる学校でした。
「学区外から受け入れる子どもは2、3人。人気の高い学校なんです」。現在、ドレイクくんは、クロッカー・ハイランズ小学校の一年生です。ドレイクくんの入学が決まり、幸運だったとランチさんは感じています。
この小学校には図書館員がいないため、 図書館員を雇うための資金集めを始め、アートやスペイン語プログラムなどの資金もPTAが募っています。この学校では、PTAがキャンペーンを行い、年間およそ10万ドル(約1,120万円)を集めています。さらに追加資金を募るため、4月か5月にはオークションを開催しています。
夫妻にとって重要だったのは、子どもたちが得意な分野を伸ばせる学校であること。ランチさんはドレイクくんを、都市部のモンテッソーリ・スクールに入れたいと考えていました。この学校が、社会性と情緒の学習(SEL学習)に重点を置いているからです。また、この学校では、瞑想を行い、問題解決の手段を教えます。こうした学びは学問と同じくらい重要だとランチさんは考えています。
夫妻は、ドレイクくんをモンテッソーリ・スクールに転校させましたが、彼は二ヶ月しか通いませんでした。前の学校と、そこでできた友だちを恋しがったからです。結局クロッカー・ハイランズに戻すことになりました。
弟のデレックくんは、公立のトランジショナル・キンダーガーテン・プログラムに属し、フランコフォン・スクールに通っています。フランコフォン・スクールは公設民営のチャータースクール*で、フランス語の集中訓練プログラムがあり、バイリンガルなカリキュラムが組まれています。
トランジショナル・キンダーガーテンクラスとは、カリフォルニア州の学校システムに新設されたものです。アメリカの学校は9月入学のため、9月1日 までに5歳になっていない秋生まれの子どもたちは早生まれとなり、キンダーガーテン(小学校就業前に一年間通う準備スクール)に入学できません。そのため、早生まれの子どもたちがプリスクール* (幼児教育を行う学校)からキンダーガーテンに入学するまでの移行期に通うクラスという制度です。現在カリフォルニア州では、働く保護者の大半は、生後間もなくから5歳までの子どもたちを、デイケアとプリスクールの両方、またはどちらかに入園させる必要があります。
場合によっては、私立のプリスクールの費用を払わなければなりませんが、子ども一人あたり年間1万5千~3万ドル(約168万〜336万円)にもなることが多いのです。トランジショナル・キンダーガーテンクラスの設置により、保護者は子どもたちが4歳の時点から、公立学校のシステムに入れることができます。このプログラムがあるため、保護者は民間のチャイルドケア(プリスクール)の費用を負担しなくて済み、1万8千ドル(約202万円)を節約できるのです。
ランチさんは、 オークランドの公立学校で子どもたちが様々なバックグラウンド(人種、社会的、経済的なレベルなどの)の人たちと触れ合うことを高く評価しています。
「デレックの学校は75%以上の生徒がアフリカ系アメリカ人。オークランドの真の素晴らしさはその多様性にあります」。ランチさんは言います。
ランチさんは、オークランドの公立学校が、より潤沢な資金を得てテクノロジー、コンピュータ、体育の教育により力を入れてくれることを願っています。
夫妻は、今後またいつか他の街に引っ越すかもしれませんし、中学や高校は子どもたちを私立学校に通わせることも検討しています。でも、それはオークランドで受けることができる教育の質次第です。
ランチさんは、オークランド市がサマーキャンプを割引価格で提供したり、手頃な価格で子どもたちが娯楽を楽しむ機会を与えてくれることについて評価しています。これは大きな助けになります。「家族連れや、誰もが参加できるよう料金を手頃にしてくれます」。たとえば2週間のサマーキャンプの料金は200ドル(約22,400円)ですが、民間のキャンプ・プログラムなら少なくともこの倍はかかります。
一方、オークランドに住む上でのマイナス面は、安全面の不安です。時折、家の外から銃声が聞こえます。ランチさんは、子どもたちを家の裏庭で遊ばせ、イベントや友だちと遊びの約束がある日などは車でそこまで連れて行きます。「近所では自宅の庭でしか遊ばせません。どこにでも車で連れて行きますし、私は大抵子どもたちと一緒にいます」ランチさんは言います。
米国の現在の政治情勢について、ランチさんはこう答えました。
「現状に腹を立てないようにしています。克服して、フェアでいなければなりません。トランプ大統領は好きではありません。不安要素がたくさんあり、怖いです」。
しかし、現在の政治情勢は一時的なもので、トランプ政権が終わればまた変わると感じているそうです。
最終的には、サンフランシスコ・ベイエリアで育つことでもたらされる全ての機会を子どもたちが楽しんでくれればそれでいい。ランチさんはそう感じています。「私たちはただそばにいて、子どもたちの興味を伸ばしてやりたいです」。
「でもあらゆる要素を考えますよ。母親ですからね」 。ランチさんは笑顔で言いました。