両親が経営するアイスクリームショップ「オッドフェローズ・アイスクリーム・カンパニー」でアイスを頬張る一卵性双子のアレクセイくん(5)とレイラちゃん(5)。
アイスクリーム店のカウンターに立つオーナーのモハンさんと娘のレイラちゃん。モハンさんがビジネスの中核部分を担当し、妻のホリデイさんがPRとプロモーションを手がける。この店では、開店してからの4年間に300種類以上ものフレーバーを提供している。
カウンターで本を読むアレクセイくん。
両親が経営するアイスクリームショップでポーズするアレクセイくんとレイラちゃん。
レイラちゃんを見つめるホリデイさん。ブルックリンのウィリアムズバーグにあるこのお店は大人気。雪の残る寒空の3月でも店内は満席。
クマールさん一家。アイクスリームショップ経営のアイデアは、ホリデイさんが双子を身ごもった際に持ち上がったと言う。
カウンターでポーズするレイラちゃん。店内は赤を基調とした美しい作りになっている。
窓際の席で携帯動画を見る双子の姉弟。店内には冬場でも明るい陽が差し込む。
モハンさんと双子の子どもたち。モハンさんが経営するブルックリンで大人気のアイスクリームショップ「オッドフェローズ・アイスクリーム・カンパニー」にて。
ニューヨークでビジネスを始めることは簡単ではありません。養う家族がいればなおさら大変です。様々な問題を乗り越え、モハンさんとホリデイ・クマールさん夫妻はビジネスを成功させました。
モハンさんとホリデイさん夫妻は、5歳になる双子の子どもたちとマンハッタンのイースト・ビレッジに暮らしています。パティシエのサム・メイソンさんと組んで、流行に敏感な地域であるブルックリンのウィリアムズバーグ地区に、「オッドフェローズ・アイスクリーム・カンパニー」という大人気のアイクスリームショップをオープンさせました。
アイクスリームショップのアイデアはホリデイさんが双子を身ごもった際に持ち上がったそうです。
「彼女には、妊婦が切望する食べ物としては、正常なものと常軌を逸したものがありました。私がものすごくよく覚えている三つは、フライドチキン、ココナッツジュース、そして塩味のアイスクリームです。我々のビジネスパートナーで、パティシエ歴20年のサムは長年の友人です。ある晩、ホリデイの欲しがるものについて彼に話しました。アイスクリームのくだりを耳にした彼は、数週間後、プレッツェルアイスクリームを持って来てくれて、彼女はそれを大変気に入ったのです」モハンさんは言います。
「その当時、私は金融関係の仕事を辞めるつもりでいました。ホリデイが『それなら、アイスクリーム店を開いたらどうかしら、サムに頼んでみたら?』と言ったのです。サムにその話を持ちかけると、彼は『うん、前からずっとアイクスリーム店をオープンしたいと思っていたんだ。やろうじゃないか』と言ったのです」。
オッドフェローズは家族経営タイプの事業で、モハンさんがビジネスの中核部分を担当し、ホリデイさんがPRとプロモーションを手がけ、サム・メイソンさんがショップに並べられている美味しくて常に風味が変わるアイスクリームをすべて作り上げるパティシエを務めています。ショップには、アイクリーム店の装飾として通が好む古き時代のソーダ・ファウンテン(清涼飲料水供給マシン)があります。
「開店してからほぼ4年になります」モハンさんは言います。
「自分たちは創意工夫に富んだアイスクリーム店と呼んでいます」。
開店して以来、300種類以上にもなるフレーバーを提供し続け、その味は常に変化していると言います。
「ビジネスパートナーのサムが同じことを繰り返すのを望まないので。まぁ、そうせざるを得なかったということです」。
夫妻に二卵性双子の姉弟が生まれると、ホリデイさんが大好きな文学に登場する人物にちなんで子どもたちの名前をつけました。「レイラ」はお気に入りの中東の本から、「アレクセイ」はドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』に出てくる有名な登場人物から取った名前でした。
ニューヨークで、どのようにして家族を養っているのか。
「簡単に済むことは何もありませんが、ニューヨークでは特にそうです。実情をさらに厳しくしているのは、自分たちが小さなビジネスを経営していることです」モハンさんは言います。
健康保険が給付手当として与えられる大手企業で9時5時の仕事をしていた時の方が楽だったとモハンさんは言います。今やヘルスケアは小規模ビジネス経営者として、また親として心配しなければならない数多くある問題の一つに過ぎません。
「うまく行くための方法をなんとか見つける」と言うモハンさんですが、一家はイースト・ビレッジにある65平方メートルのマンションで飼い犬と暮らしています。
子どもたちが生まれて最初の数年は、乳母を雇い子どもの世話を手伝ってもらいました。二人が大きくなって、チャイナタウンにある「プリスクール・オブ・アメリカ」( http://www.preschoolofamerica.us/ )という素晴らしい私立のデイケア&プレスクールを見つけることができました。そのプリスクール*(幼児教育を行う学校)のウェブサイトによると、この学校は「読み書き、算数、科学、社会・情緒能力、肉体的発育に重点を置いた遊びを基本とするカリキュラム」を重要視しています。夫妻が気に入ったのは、授業が二言語(北京語と英語)で教えられ、極めて多様性のある生徒構成になっていることでした。
子どもたちをどのように育てたいか、これといった特別な理念はなく、ただ「その時の流れに従いたい」と夫妻は言います。ニューヨーク市在住の多くの親たちは、学区を理由に一定の地域に移り住むなど非常に戦略的だそうですが、夫妻はそのような対応を取っていないとホリデイさんは言います。
現在、レイラちゃんとアレクセイくんは公立校付属プリ・キンダーガーテン*(就学前教育を行う施設)に通っています。
ニューヨーク市とマンハッタンでは、学校が地区分けされています。一部の地区の生徒は自分たちの地区にある学校に通っていますが、他の地区では選択が可能です。
一家が住んでいるマンハッタンの第1地区では学校を選ぶことができました。
彼らは、その地域にある革新的な教育を行うプログレッシブスクールと、伝統的な学校を両方見学しました。私立の学校よりも学費が安いことから、教区学校(宗教団体と関係がある私立の小学校や中等学校のこと)も検討しましたが、彼らにとって正しい選択ではありませんでした。クマール夫妻は子どもたちを私立の学校に通わせることを望んでいましたが、二人分の学費を支払う余裕はありませんでした。
彼らが選んだのは、家からほど近い「PS110フローレンス・ナイチンゲール・スクール」(http://www.ps110pta.org/)という公立の学校でした。
この学校のカリキュラムは伝統に乗っ取った公立の教育課程ですが、夫妻の目にはその教育理論がいくぶん革新的に映りました。夫妻は、子どもたちをこの学校の「才能&有能プログラム」( http://www.ps110pta.org/academics-and-programs/gifted-and-talented )(知的能力の高い生徒を特定し、当別な学習を行う。審査によって選ばれる)
という特別クラスに入れたいと願っていますが、それがかなわない場合は二言語教育の伝統的な小学校付属キンダーガーテンに転校させることになるだろうと言います。
「いわゆる伝統的な学校の方が、非常に『アジア的』なのです。宿題が多く出るのですが、両親もそうして私を育てたのだと思います。自分の子どもたちにはもう少し柔軟性のある教育を望んでいました」ホリデイさんは言います。
夫妻は公立のチャータースクール*も見学しましたが、学校自体が彼らの居住地区にはなかったので断られました。
子どもたちは現在、日曜日に私立の中国語学校(すべてが中国語で教えられている学校)にも通っています。
「モハンさんはインド家系で、ホリデイさんは中国系です。 ニューヨークに住んでいるので、子どもたちにあえて多様性について教えることはありません。
子育てをしながらこの都市に住んでいて助けになったことは、プリ・キンダーガーテンの存在が大きなヘルプになっているということでした。また、文化施設や博物館が数多くあることや、自然を体感するためハイキングをしに郊外に日帰り旅行に出かけることもできるそうです。
「ここでは、やることが沢山あります」ホリデイさんは言います。
「この街に住む人々は、この街が提供してくれるあらゆるアクティビティに甘やかされているようなものです。もし土曜や日曜に何もしないと、子どもたちは『つまらない』と言います。ここでできるたくさんのことをよく知っているのです」。
「郊外に住むなんて想像できない」とホリデイさんは言います。
家族で都市に住む難しさについて彼らが口にしたのは交通機関と駐車場所でした。とりわけ子どもたちを連れて市内を移動するのは難儀なことで、二人がまだ幼く二人用ベビーカーを引き回して連れて行った時代はなおさらだったそうです。モハンさんがビジネスを立ち上げるため四六時中働いている間、ホリデイさんは家から一歩も出られないことが多々ありました。彼女にとって精神的にとても辛い時期だったそうです。
子どもたちに望むのは、世界について関心や好奇心を持って欲しいことだとホリデイさんは言います。一家は毎年、海外旅行に出かけるそうですが、目的地は子どもたちに優しい場所でなければなりません。これまで、モントリオール、ベルリン、ダブリン、メキシコシティを訪れました。「子どもたちを様々な文化に触れさせ、世界の生徒にしたい」とホリデイさんは言います。
ドナルド・トランプ氏が大統領となったこの国の現在の政治環境について。
「子どもたちは今、社会的意識について教え始めるのに絶好の年齢です。これまでに女性や移民のためのデモ行進に連れて行きました。彼らはこの年齢でもなぜ人々がトランプや彼の政策に失望するのかを理解しています。なぜ人々がこんなにも怒っているのか、そして彼がこの国のリーダーであることが私たちをどのように感じさせるのか。そうしたことを理解できるよう助けています」 モハンさんは言います。
「この世界が今よりも素晴らしい場所になり得ることを知って欲しい」とモハンは続けます。「憎しみや、ドナルド・トランプがこれから先この国を導こうとしているやり方を使う必要はありません」。
夫妻は、環境問題やクリーンエネルギーの重要性についても子どもたちに教えています。同時に、寛容さについても教えたいと思っています。トランプ氏を支持する人々がいてもそれは悪いことではないということも知って欲しいからだと言います。
子どもたちには幸せになり成功して欲しいと夫妻は願っています。二人に望むのは、この世界をより良い場所にするために行動すること。
「子どもたちが、自分たちが何かを変えることができると知っている限り、それでいいのです」。