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赤ちゃんの
成長と遊具

赤ちゃんの育ちと空想遊び

Vol.32 Autumn/Winter 2011/2012

「成長と遊具」では、赤ちゃんとの接し方、あそびのヒントを、成長に合った遊具と一緒にご紹介します。
今回は心を育む空想遊びの大切さを、大人の関わり方とともに考えます。

(株)こども保育環境研究所 齋木里奈
(株)こども保育環境研究所は全国の保育園・幼稚園の施設や運営についてのコンサルタント業務などを行っています。保育所や教育施設に通う約3,500人の子どもたちの成長とあそびの様子を観察、その調査結果をデータ化して、保育施設の子どもたちの記録「成長のあゆみと園生活」を制作。普段は知ることのできない園での子どもたちの様子がよく理解できると好評です。

 思いやりの心とは、相手がどのような状況か、何を感じ、何を考えているのか、何か自分がしてあげられることはないのかを想像することからはじまります。小さな頃からの親子の関わりのなかで、相手に思いを届け合う楽しさや喜びをくり返し体験することで、その心は育っていきます。生活のなかで相手の気持ちに興味をもち、考え、喜びを伝えたいと思う心を受けとめてあげること=想像力の共有こそが思いやりの心を育てることなのです。
 想像する力は、まずは空想遊びからはじまります。空想遊びというと、「どんなあそび?」と考えてしまう人もいるかもしれませんが、子どもにとって、毎日の生活そのものがあそびです。自由に気持ちを膨らませて、たくさんの楽しい会話や発見の瞬間を重ねていくことが、空想遊びであり、それが「想像力」につながっていくのです。

Q1 赤ちゃんにも話しかけたほうがよいと言われますが、何と話しかけていいかわかりません。

 赤ちゃんはまず身近な大人であるお父さん、お母さんの声や表情をしっかり受けとめています。やさしい声で触れられれば、その心地よさから嬉しいことや、快適なことを体験として学んでいきます。悲しいこと、不快なことも同様です。話ができない赤ちゃんだからと無言のお世話になってしまわないよう、できるだけシーンに合った言葉と表情のやり取りで関わりをたくさんもってください。それにはお父さん、お母さん自身のゆとりが大切です。赤ちゃんが生まれたら、とにかく赤ちゃんを優先してしまいがちですが、自分の好きなもの、心地よいと思うものがあってもよいのです。お父さん、お母さんが気に入っているものなら、自然な言葉で「かわいいよね」「気持ちいいね」など、思ったままに伝えてあげられるでしょう。意識しなくてもリラックスでき、笑顔も言葉も出やすいですよ。
 また、「握れたね」「ぱたぱたできたね」など、赤ちゃんの動作を肯定的な言葉で表現してみてはどうでしょうか。言葉がわからなくても、その声の響きや表情から、よい意味であることは伝わります。赤ちゃんはわかってもらえている、認められていると感じ、安心もするでしょう。

Q2少しずつ言葉が出るようになりました。言葉の広げ方ってありますか?

 「もの」と「そのものの名前」をつなげるときに、一方的に単語として教えてしまわず、「見て見て、動いてるものがいるけど、何だろうね」と、一緒に考えたり、興味をもったものについて、色や形、動きなどに広げるような演出をしてあげると、単語としてではなく、楽しいやりとりとして、子どもの心に言葉が刻まれます。興味をもったものに対して答えが出てくると、「なるほど」と驚きをともなった感情が出てきます。そして、もっと知りたいと思うことが心を育てるのです。
 言葉を覚えはじめると、簡単なクイズも楽しくなります。子どもは「当たり!」「正解!」「ピンポーン!」と言われるのも、言うのも大好き。たくさんの正解がある質問をしてあげたり、質問をさせてみてはどうでしょう。たとえば、「“あ”のつくものなんだ?」と問題を出したり、リビングなど場所を区切って同じ色探しをしてみても楽しいですよ。失敗のないあそびは、子どもの「もっと知りたい」という好奇心を引き出してくれます。

Q3 自分でできることが増え、注意したいことも出てきました。上手に伝える方法を教えてください。

 外出する機会が増えてくると、危ないこと、してほしくないことも出てくるでしょう。また、食事中何度もコップの水をこぼして遊んでしまうような、悪いことなのに、「おもしろい!」が勝ってしまうこともある頃です。その場で叱っても興味をもって楽しんでいたのに、突然「ダメ!」となれば大泣きさせて終わってしまいそうです。大泣きして興奮しているときの注意は 「怒られるからだめ」というように、本質が伝わらないものになってしまいがちです。「こんなことしたらママ、悲しいな」「テーブルが濡れちゃうと困るよね」と、その後が想像できるように諭してあげる機会ももってほしいと思います。
 子どもに伝えたい大切なことは、たとえばお風呂に入っている時間や、寝る前などのお互いにリラックスした気持ちのときに、子どもにもわかる言葉で一緒に考えてみてください。客観的に考えられるように、童話などの物語をたとえ話のように使って、考えてみるのもよい方法です。一度では理解できないかもしれませんが、表現を変えて、くり返し伝えることで少しずつ想像できるようになり、反応が変ってくると思いますよ。

Q4 兄弟同士でごっこ遊びをすると、はじめは楽しそうでも、ケンカになってしまいがちです。

 年令差のある兄弟(姉妹)が子どもだけで遊ぶのは、できることや興味が違うので、なかなか難しいことです。たびたびケンカも起こるでしょう。ケンカをすることは悪いことではありませんが、相手を思いやりながら、子どもだけで遊べるようになるのはもう少し先のことです。けれども、年令の近い子ども同士の関わりは、思いやりの心を育む大切な経験となるので、身近な大人がほんの少しだけ関わってあげてください。大人が役割をつけたり、それぞれができることを説明して、互いを理解することができれば、上の子は下の子を思いやる気持ち、下の子は上の子に憧れる気持ちをもつきっかけになります。
 積み木を積み上げることが楽しくなった頃の上の子と、崩すことがおもしろい下の子であれば、同じタイミングで遊びはじめればケンカも起こりますよね。たとえば、上の子を積み木で街をつくる人に、下の子は怪獣に、とストーリーをつくってあげましょう。ビルのある街を積み上げているときは下の子と一緒に「お兄ちゃん、すごいね」と応援してあげ、お兄ちゃんをたくさん褒めてあげてください。次に怪獣役の下の子に壊させてあげます。「こわーい、力持ちの怪獣ね」と互いのできることをさり気なく伝えて兄弟の関わりを支えてあげてください。一緒には遊ぶけれど、同じタイミングではなく、それぞれの見せ場をつくってあげることで、どちらも楽しく遊んだという実感をもてるでしょう。あそびを通じて、できることをわかり合えるチャンスにもなるのです。
 ごっこ遊びは空想の世界を広げることができる、子どもの成長にとって必要なあそびです。ぜひ、身近なお父さん、お母さん、家族やお友だちと一緒に、いろいろな役割やシーンを設定して、遊ぶ機会をもってほしいと思います。自分とは違う人になって、いろいろな立場でものを考えたり、表現することは、思いやる気持ちを育てるためにもとても大切なことなのです。

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