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赤ちゃんの成長と遊具

心身の健やかな発達と安心感

Vol.46 Autumn/Winter 2016

赤ちゃんは両親から守られているという安心感を糧に心を育てていきます。
今号では東日本大震災直後、福島県郡山市で「子どもの心のケアプロジェクト」を発足し、活動を続けている小児科医 菊池信太郎先生のお話から、心の発達と親子の関わり方について考えます。

菊池 信太郎 先生
小児科医
医療法人仁寿会 菊池医院院長
認定NPO法人 郡山ペップ 子育てネットワーク理事長
1970年東京都生まれ。東京慈恵会医科大学卒。慶應義塾大学大学院卒。医学博士。2011年の東日本大震災後、子どものあそびの重要性に着目し、「ペップキッズこおりやま」のオープンに奔走する。

Q1 はじめての赤ちゃんに、どう接してあげたらよいかわかりません。

 とくにはじめての子育てでは、インターネットや育児本の情報通りではないというだけで、不安になってしまうお母さんも多いようです。しかし、赤ちゃんはマニュアル通りにはいかないし、母乳やミルクを飲む量、眠る時間、排便の回数もそれぞれ違います。
 医学的な観点から見れば、毎日体重が増えて、おしっこが出て、手足をよく動かしていれば十分元気で、ちゃんと育っているし、大きくなっている。お母さんたちは、それだけで自信をもっていいのです。
 親として接するときに一番大事なのは、赤ちゃんを見て、「かわいいな」「愛おしいな」と、心から思えることです。赤ちゃんは3才までに、お母さんとの愛着が形成されるといわれています。その間、赤ちゃんは、お母さんの様子や対応から安心を感じとり、逆にお母さんも赤ちゃんの反応に感情を返すことで愛情を増していきます。これを母子愛着といいますが、その相互作用をくり返していくことが、強い絆となっていくのです。 赤ちゃんの心は育てようと思って育つものではありません。感覚や感情のやりとりのなかで、こちらから愛情を注ぐことで自然に育っていくのです。

母子愛着は赤ちゃんとの自然なやり取りのなかで育まれていきます。お母さんが見えないと不安で泣き出していた赤ちゃんも、3才になると幼稚園に通えるようになります。それは、それまでの触れ合いのなかで愛着形成がしっかりとできあがり、距離的な問題ではなく、存在としてお母さんは自分のすぐそばにいて、守ってくれると思えるようになるからです。

Q2 赤ちゃんと心を通わせるために、よい方法はありますか?

 寝る前にお母さんが本の読み聞かせをするという習慣はいかがでしょうか?絵本の読み聞かせは、DVDやテレビとは違って、肉声が直接赤ちゃんに届くのでとてもよいことです。
 日中お母さんに叱られたり、嫌なことがあったりしても、寝る前にはいつものように読み聞かせをしてもらえると、一日の気持ちのリセットにもなるし、何より安心感につながります。子どもの心は「たとえ自分が何かをしたとしても親は絶対自分を見捨てない」、という感覚がよりどころになるのです。それが関係づくりの基本なので、ぜひ実践していただきたいと思います。
 よい絵本にたくさん巡り会うと、その内容が自分の実体験に重なることがあります。何か困ったことや悲しいことがあったときに、どうやって絵本の主人公は乗り越えるのかという、人生のヒントが詰まっているのです。
 東日本大震災直後から、郡山ではPTSD(心的外傷後ストレス障害)の早期発見のために、私たちはまず子どもたちに絵本の読み聞かせをはじめました。ずっと家に閉じこもったまま不安を抱えた親子が、少しでも安心する環境に出かけるきっかけになることと、絵本の読み聞かせを通して心が休まる時間をつくることが目的でした。実際に子ども以上にお母さんが涙する場面も多く、親子が心を開放するきっかけとなりました。
 もし赤ちゃんが不安定で、お母さん自身がどう対処したらいいかわからなくなったときは、抱っこして一緒に好きな絵本を読むと気持ちが変わることがありますよ。年令が上がったお子さんでも同じです。ただし、絵本を読むときは、本気で読んであげてくださいね。

Q3 赤ちゃんとは、どのくらい、どんなふうに一緒に遊べばよいのでしょう?

 何か特別なことではなく、赤ちゃんの頃はこちらから働きかけて、五感に刺激をしてあげることが、結果として赤ちゃんにとってのあそびになるのだと思います。
 6カ月までの赤ちゃんは自分の意志で動けないので、手足を動かしてあげたり、抱っこしてあげたりするだけでも、十分にあそびです。
 6カ月を超えてお座りができる頃には、自分の意志で手先が動かせるようになるので、小さな手でも持ちやすく握りやすいものや、動かすと音が出るもの、はっきりした色があるものなどに興味を示しはじめます。
 とくに歩くようになるまでは、日々の成長で、できるようになることがどんどん変わります。その時々に合った、赤ちゃんが遊びやすい道具なども使いながら、声をかけたり、一緒に動かしたり、赤ちゃんに合わせて反応を返してあげてください。
 私は健診で来院したお母さんに、「たくさんお話をしてね」と伝えています。反応がないからと、赤ちゃんに話しかけないお母さんもいるのですが、言葉は頭のなかに刺激として入っています。頭や聴覚に働きかける声かけは、小さな頃からとくに大事なことなのです。そのやりとりのなかで、親子の関係性も深まっていきます。
 まだ会話にならない赤ちゃんに話かけるのは難しく思うかもしれませんが、赤ちゃんの発する「あー」「うー」は聞き流したりしないで、リアクションを返してみましょう。顔を見ながら、「何かな?」「どうしたの?」「そうだよね」と返事をしてみてもよいし、同じ言葉を同じトーンで返してあげるだけでもよいのです。自分のアクションに反応が返ってくることが、赤ちゃんにとっては刺激であり、何よりのあそびなのです。

Q4 子どもが不安を感じているときに、親がしてあげられることは何でしょう?

子どもが不安を感じているときに、親がしてあげられることは何でしょう?

 子どもが不安を感じる多くの場合は、新しい環境へ移行するときと、親や周囲の大人の不安が伝わるときだと思います。周囲の大人は自分の不安を子どもに悟られないことが重要だと思います。
また、「大丈夫だよ」「いつもあなたには私たちがついているよ」と、伝え続けることが大事なことです。それが子どもたちの安心につながります。
 「手当て」という言葉があります。不安を感じている子どもが、信頼している人の手のぬくもりを感じることは何より気持ちが落ち着きます。お腹が痛かったら、お腹に手を当てる、頭が痛かったら頭を撫でてあげる、まさに手を当てることで、子どもの不安や痛みは和らぎます。もし、不安に感じていることがあるようだったら、しっかり抱っこしてあげてください。
 1才までの赤ちゃんは、栄養と愛情さえしっかり注いでいれば、心も体もちゃんと育っていきます。難しいテクニックは必要ありません。目の前の赤ちゃんとしっかり向き合ってみてください。
 そして、お父さんや周りの大人は、目の前の赤ちゃんに対して無我夢中になってしまいがちなお母さんが、ゆったりと赤ちゃんと過ごせるよう環境づくりのサポートをしてほしいと思います。

この記事は、あそびのもりVol.46 Autumn/Winter 2016の記事です。

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