あそびのもり ONLINE

赤ちゃんの成長と遊具

教えようとしなくても赤ちゃんは自ら学びます

Vol.47 Spring/Summer 2017

子どもには、あそびの時間も含めた毎日の生活体験すべてが生きた学びの機会です。
それは生後間もない赤ちゃんも同じ。思いきり遊び、学べるように関わってあげましょう。

井桁容子 先生
東京家政大学 ナースリールーム主任 非常勤講師
40年にわたり保育に携わり、多くの親子を見守るかたわら、講演会や「すくすく子育て」(NHK Eテレ)出演など幅広く活躍中。主な著書に、『ありのままの子育て』(赤ちゃんとママ社)。

Q1 育児書に書かれてあることがうちの子にはまだできません。どう教えたらいいでしょう?

 「赤ちゃんは未熟で無個性」と思っていませんか? 実は、赤ちゃんの学びはお腹にいる胎児の頃から始まっていて、生まれたばかりでもできることが山ほどあると科学的に証明されています。つまり、「教えなくちゃ」と頑張らなくても、赤ちゃんは自らマイペースで学んでいるので大丈夫です。
 誰も教えないのに手をグーパーしているうちに、いつの間にか物を掴めるようになったり、そのうち持ち上げて透かして見たり、逆の手に持ち替えたりします。そうやって自分の体の機能を学びます。赤ちゃんが夢中になって何かしているときは、学習タイム。お母さんはただ見守り、少しずつできることが増えていく様子を一緒に楽しめばよいのです。学びの順番やスピードは人それぞれ。焦ることはありません。
 近年、文部科学省では知識をたくさん身につけることを重視するこれまでの教育から、その子がもつ能力を引き出し、個性を伸ばして「心の育ち」を応援する教育へと方針転換を進めています。
 一人として同じ人間はいませんから、マニュアルにそって同じように教育するのでなく、一人ひとり異なる能力や個性を認め、伸ばしてあげましょうということです。
 お母さんやお父さんは、「その子らしさ」を、世界に一人しかいないかけがえのない存在としてしっかり受け止めてあげましょう。安心感や信頼感に包まれることで、子どもには自然と「学ぼう」という気持ちが芽生えていくものです。

Q2 赤ちゃんの学びを応援するには、何を与え、どうしてあげたらよいでしょう?

 赤ちゃんは基本的に自ら学ぶので、大人がすべきことは快適な環境をつくることだけです。ひとつは生理的に心地よい環境で、たとえば、体を適温に保つ衣服を着せてあげたり、お腹をすかせないようにしてあげたり、眠そうだったら心地よく眠れる環境などです。
 もうひとつ、心理的に安心できる環境も大切です。不安なときに体に触れたり、声をかけてもらったりなど人と触れ合うことで、気持ちは落ち着くものです。
 また、目が合えばにっこり笑ってくれる、声を出していたら、「ご機嫌ね」と反応してくれるなど、自分の働きかけに対して人から共感されることも、「学ぼう」という意欲を育む土台になります。
 大人の価値観や想像力を超え、人間の赤ちゃんにとってはさまざまなものが学びの種になります。風の音や小鳥の声、揺れる洗濯物や天井に映る影など、大人が見落としているようなものにも「あれは何だろう」と好奇心を示します。 とはいえ、親が欲張って遊具や刺激をたくさん与えすぎれば、まだ処理能力が限られた赤ちゃんの脳は混乱しますから、どうぞほどほどに。
 また、何に興味を示すかは赤ちゃんそれぞれで違います。実は、受精した時点から、個性やその子らしさをもつのですから当然です。たとえば、お母さんが歌う子守唄が好きな子もいれば、おばあちゃんの演歌でご機嫌になる子もいます。個性に合わせた環境づくりができれば、子どもは気持ちよく学びます。

Q3 うちの子にぴったりの学びにつながる遊具の選び方を教えてください。

 赤ちゃんの個性を観察して、遊具選びにも役立てましょう。音楽を喜ぶ子なら楽器など音の鳴る物を、ペロペロ舐めることが好きなら、口に入れても安心な物。リモコンや台所道具がお気に入りなら、ごっこ遊び道具などを選んでみる。大好きな遊具は子ども自身が普段の仕草や行動で教えてくれます。
 大事なことは「その子らしさ」であって、「男の子だから」とか「女の子らしく」などは考えなくて大丈夫。あそびのなかでは男の子のほうに車好きが多いとか、女の子には世話好きが多いなど生物学的な傾向が見られることもありますが、それもその子の個性から現れてくる違いでもあります。
 大人の価値観を押しつけて可能性を狭めてしまうのはもったいないことです。人形を欲しがる男の子は人間に対する興味が強く、思いやり豊かな子かもしれません。虫好きの女の子がいても当然です。ひとつの個性として尊重することが大切です。
 同じミニカー好きでも、形や色、動く仕組みなど、こだわる点や美意識は人それぞれ。将来的な選択肢も、設計士や運転士などいろいろです。「好き」を入り口にして可能性を広げられるよう、親は上手に応援してあげたいですね。

 赤や黄色は赤ちゃんが一番興味を引かれる色。そればかりでは刺激が強いので、生活用品は落ち着いた木目調などバランス良く取り入れて。また、遊具は基本的に子どもが遊びたがるものを与えますが、もし迷ったら、親の好みで選ぶのも一案です。同じ感性の遺伝子を受け継いでいるので、いつか興味を示すことも。

Q4 「個性」や「その子らしさ」を伸ばしてあげたいです。どうしたら見つけられますか?

 赤ちゃんをよく観察することです。何に興味を示すのか、どんなときに嬉しそうかなどを見つけましょう。それには、赤ちゃんが泣いたときだけ近寄るのでなく、ご機嫌なときこそ一緒にいることが大事です。手や足の動き、何を見ているかなど、その子のありのままのデータを集めれば自然と見えてきます。
 たとえば、音に敏感だったら、絶対音感の持ち主かも。いろいろな音楽を聴かせてみましょう。なかにはジャズ好きの赤ちゃんもいます。手足をバタバタ動かすのが好きな子はスポーツが得意かもしれません。
 個性を無視して、親の思いばかり押しつければ、「私の気持ちをわかってくれない鈍感な人。嫌い!」と思ってしまうかもしれません。嫌いな音楽を聴かせつづけたり、食べたくないものを口に入れたりすれば、「やめて」と声に出せない赤ちゃんは泣いて訴えるしかないでしょう。
 個性といえば、学び方もさまざまです。たとえば、口の中と視覚神経がつながっているので、多くの赤ちゃんは何でも口に入れ、唇や舌で形を確認しながら学ぼうとします。指しゃぶりも好奇心から始まる行為です。だから、「汚い」「お行儀が悪い」とやめさせるのではなく、見守りましょう。でも、物を口に入れたがらない子もいます。もしかしたら、防御本能が強く慎重な子かもしれません。子どもの行為は否定的に見ず、長所や得意なことととらえ見守りましょう。

 口に入れることで、物の形や固さ、匂いなど、さまざまな情報を得ています。何でもしゃぶりたがる子は一般的に好奇心が強い子といわれます。でも、口に物を入れることが苦手な子もいます。それも個性。子どもがしたいことを尊重してあげましょう。

この記事は、あそびのもりVol.47 Spring/Summer 2017の記事です。

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