あそびのもり ONLINE

赤ちゃんの成長と遊具

あそびが生み出す、自然と動きたくなる環境

Vol.48 Summer/Autumn 2017

赤ちゃんの時期は、発達過程で体の基礎を育む大事なとき。そのためには、自ら動きたいと思う環境をつくってあげることが大切です。子どもの発達支援と親の子育てサポートを長年なさっている星山先生にお話をうかがいました。

星山麻木 先生
明星大学教育学部教授
保健学博士
(社)こども家族早期発達支援学会会長
音楽療法士
人間の生涯発達を支える創造的な音楽プログラムの実践研究を20年以上続けている。近著に『この子は育てにくい、と思っても大丈夫』 (河出書房新社)がある。

Q1「成長」と「発達」は、どのように違うのですか?

 つい混同して使ってしまいがちですが、「成長」というのは「身長が伸びたね」「体重が増えたね」などと言う、数字に表せて目に見えて変化がわかるものに対して使う言葉です。「発達」というのは、言語、認知、運動、コミュニケーションなど、脳が司っている機能が変化すること。もう少し詳しく言うと、言語や認知力が発達するということは、脳の中にある脳・神経系の細胞がつながってネットワークが形成されていくということです。それによって言葉のキャッチボールがうまくできるようになったり、小さなものをつかむことができるようになったり、丸や三角の形が認識できるようになったりします。
 私の仕事は、あそびを通してそうした子どもたちの発達を促すお手伝いをすることです。今は便利で効率的な環境が整えられていて、昔と比べてあそびによって得られる刺激が少なくなっているので、子どもが健やかに遊べる環境を大人が用意してあげることが大切だと感じています。

Q2 赤ちゃんの体の発達には何が大切ですか?

 発達が促されるには、脳・神経系が刺激されることが大切で、そのためにはたくさん遊んで体を動かした方がいいのです。けれども、親が子どもに何かを「させる」のでは刺激されないので、自分から動きたいと思って「自発的に動くこと」が大事です。
 赤ちゃんのうちはいつも寝ているばかりですが、実は興味をもったことに対して自分なりに体を動かして遊んでいます。最初のあそびの対象は、自分の体。感覚器のなかで一番、敏感なのが口の中です。まだ手や足が自分のものであることを知らないので、舐めたり、触ったりして口の中で手や足の輪郭や形を理解したり、口に運んでくるまでどのくらいの距離にあるのか、前後左右の方向感覚など、遊びながら自分の体を通して学習します。
 両足を顔の方に持っていったり、手をヒラヒラさせたり。私たち大人から見ると、なぜこんなことをするんだろうと思うかもしれませんが、そういう一つひとつの動作が重要なあそびで、そのあそびを十分に体験することで脳・神経系の発達が促されるのです。
 親はとくに何も教えなくて大丈夫です。安心できる環境をつくってあげれば、自ら自然に遊びながら体得していきます。いろいろな体の動きを温かく見守りながら、「なめたら冷たかったねえ」「風が吹いてきたね」などと、赤ちゃんと同じ目線になってともに感じながら、優しく声をかけてあげてください。

Q3 音楽を聴くことは、体の発達にいい影響を与えますか?

 お腹の中にいるときに最初に聞くのは、お母さんの心臓の音や血液が流れる音、そして、お母さんの声です。それらが一番安心できてリラックスできる音なのです。赤ちゃんは音と動きを連動して覚えやすく、歌や音楽にはいろいろな効用があるので、体の動きと合わせて歌を歌ってあげるといいでしょう。「私はあまり歌が上手ではないから」というお母さんもいらっしゃいますが、上手い下手は関係ありません。
 泣いているときは、抱っこして静かな歌を歌いながら優しくゆっくり揺らしてあげると、だんだん落ち着いてくると思います。揺れるという運動は重力に逆らうので脳・神経系に刺激を与えるのと、歌の刺激との相乗効果になります。ごきげんで、もっと遊びたいというときには元気で明るい曲を歌ってあげると、気分が高揚して体の動きが激しくなり、体の発達に大事な、自分から動きたくなる気持ちを自然と引き出してくれます。また、元気な曲には、末梢神経が刺激されて皮膚温が上がり、手足の先が温かくなる効果もあります。
 少し慣れてきたら、いつものように抱っこして歌いながら揺らして、途中でピタッと歌うのを止めてみてください。「どうして途中で止めちゃうの?」と、赤ちゃんはびっくりしてお母さんの顔をのぞき込んだり、面白くて笑ったりするでしょう。そういう刺激を与えるような工夫をしながら多様なあそびをたくさんしてあげてください。

星山先生は、お母さんの子育てを応援する活動を行っています。写真は、ボーネルンド本店で行ったワークショップ「親子レインボーパレット」の様子。音楽に合わせた体遊びを楽しみました。お母さん、お父さん同士の交流の場にもなりました。

子育て中のお母さんたちへのメッセージ

 子育てはもともと誰かの力を借りてするもので、ひとりではできないものです。「ひとりで何もできない自分は、母親としてダメなんだな」なんて思わなくて大丈夫です。また、よその子どもだと冷静に見られて楽しく遊べるけれど、自分の子どもとずっと二人きりで遊んでいると苦しくなったり、長時間は一緒に遊べないと思うのは、自然なことです。
 だから、私たちは仲間をつくるのです。子ども同士が一緒に遊べなかったとしても、お互いにただ見守っているだけであってもいい。お互いの子どもの発達を喜び合ったり、不安な気持を話したり。誰かに助けてと言ったり、頼るのは恥ずかしいことではありません。
 「他のお母さん同士の輪にちょっと入りにくい…」という方もいるかもしれませんが、あそびが介在すると楽になれますよ。あそびは、大人にとっても大事なこと。そんなに心配しないで、一緒にボールを転がしっこして遊んでみてください。その中に子どももいれば、何も心配ないですよ。一緒に語り合ったり、笑い合ったりする仲間をつくってみてください。

この記事は、あそびのもりVol.48 Summer/Autumn 2017の記事です。

Vol.48 Summer/Autumn 2017

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