あそびのもり ONLINE

赤ちゃんの成長と遊具

心の発達を促す共感する心

Vol.49 Autumn/Winter 2017/2018

心の根っこの部分を育むのは、赤ちゃんの時期。子どもの発達支援に30年以上携わってきた星山先生は、この時期に一番大切なことは、思いをきちんと受けとめて返してあげることだと言います。

星山 麻木 先生
明星大学教育学部教授
保健学博士
(社)こども家族早期発達支援学会会長
音楽療法士
人間の生涯発達を支える創造的な音楽プログラムの実践研究を20年以上続けている。近著に『この子は育てにくい、と思っても大丈夫』(河出書房新社)がある。

Q1赤ちゃんの心が発達するためには、親は何をすればいいのでしょうか?

 赤ちゃんは、まだ自分の思いを言葉で表現することができませんが、実はお母さんにいろいろなサインを送っています。泣いたり、ぐずったり、笑ったり、お母さんの目をじっと見つめたり。この時期に心が発達するうえで大切なのは、そのサインをちゃんと受けとめて返してあげることです。赤ちゃんが「あーあー」と言ったら、「あーあー」と返してあげたり、「まぶしいのかな」「お腹がすいたね」「どこか痛いのかな」と、赤ちゃんの気持ちになって「共感」することです。
 けれども、赤ちゃんが一生懸命サインを出しているのに何も反応しないと、「心が通じていないんだな」と思ってサインを送るのをあきらめてしまいます。発語の前の時期だからこそ、赤ちゃんの言葉にならないサインを感じ取って、仕草でも動作でもいいので優しく温かい気持ちで応答してあげてください。お腹がすいたのかなと思ったけれど、実はおしめを替えてほしかったりすることもあります。赤ちゃんが思っていることを、初めからすべてわかるお母さんなどいません。大事なのはわかろうとする、共感しようとする気持ちをもつこと。ともに喜んだり、驚いたり、悲しんだりしていくうちに、だんだん思っていることがわかるようになっていくと思います。

Q2赤ちゃんにも自尊感情はあるのですか?

 もちろんあります。自分で自分を大切にする気持ち、自尊感情は、赤ちゃんの時期に育まれます。先ほどもお話した通り、一番大事なのは、赤ちゃんが何かサインを出したときにかならず誰かが反応してあげることです。それによって自分の存在価値を認めてくれた、自分は人から愛されている存在だという安心感や人に対する信頼感につながり、経験として積み上げられていきます。大きくなってからは思い出せなくなるのですが、それは脳の深いところにきちんと記憶されていきます。
 つまり、赤ちゃんの時期は、心が発達していく最初の段階で大事な根っこの部分になります。やがて幹が伸びて葉をつけ、花を咲かせますが、もしその根っこの時期にちゃんと心が育まれていなかったら、大きくなってからパタリと根から倒れてしまうこともあるかもしれません。人間で言えば、大人になってからどこか心が空虚に感じたり、自分で自分のことを大事に思えないということにもなってしまいます。 
 ですから、赤ちゃんの時期は親や周りの人たちが愛情をたっぷり注いで可愛がってあげることが大切です。言葉でなくても、抱っこをしたり、優しく抱きしめるのもいいでしょう。お母さんの温かい皮膚に触れると、体中が安心感に包まれるので、それも気持ちを受けとめることにつながります。

Q3自分の心が乱れてイライラしてしまうことがあり、後でとても反省してしまいます。

 イライラしてしまうのは、赤ちゃんに原因があるわけでもなく、あなたが悪いお母さんだからでもありません。自分が疲れていたり、一生懸命頑張っているのに誰も認めてくれない、やることがいっぱいあって大変と思うときが多いのではないでしょうか。
 人間には1日のうちで感情の波があるので、朝から寝るまでの間の気持ちをノートに記録して自分の心を「見える化」してみるのもいいと思います。1週間ぐらいつけていると、自分のリズムがわかってきます。どこかに出かけたり、友だちとたくさんおしゃべりをした日は、気持ちが安定して落ち着いている。けれども、何日も外出していなくて人と会っていなかったり、夕方に食事やお風呂などの準備が集中するときにイライラしてしまう。というように、そこからイライラの理由や時間帯、解決策が見えてきます。夕食の準備の前にお風呂に入ってしまうとか、週に一度は赤ちゃんと一緒に外出して人と話をする時間をつくる。あるいは、いつもイライラしてしまうのが夕方という決まった時間帯や、雨が降る前後だったりする場合は、そのときに自分が癒される音楽を流したり、趣味など自分の好きなことをしてみる。そういうちょっとした気分転換になるようなメニューを普段からいろいろ考えておくといいと思います。
 それから同じ子育て中のお母さんたちに会うことも、イライラした気持ちが解消できると思います。家の中で子どもと2人きりでずっといると煮詰まってしまいますが、他の子どもたちと一緒のなかで自分の子どもを見ていると、不思議とイライラしないものです。家では見せない姿を見せたり、あそびを通して日々、発達していく様子を仲間が一緒に喜んでくれる。ほかのお母さんたちと会話をしなくても、ただ一緒に子どもが遊ぶ姿を見ているだけでも、一人ぼっちでいるよりずっと楽しいと思います。

Q4心の発達は赤ちゃんだけでなく、大人になっても続くのですか?

 心は一生、私達が生涯を終えるまで発達するといわれています。私たちは今、その途中段階にいて、赤ちゃんを授かることでさらにまた発達していきます。赤ちゃんの時期は心の発達のベースをつくる、とても大事なときなのですが、お母さんがプレッシャーに感じることはありません。とにかく大切なことは応答してあげる、温かい愛情で包んであげることの2つだけです。
 私が子育てをしていたときは、一日一回、子どもと一緒に笑うという時間を意識的につくっていました。ハイハイを始めた頃に抱っこをしていたら、突然、子どもが鏡を見てケラケラと笑い始めたんです。赤ちゃんが笑うと、私も楽しくなって、その笑顔を見ていたらとても幸せな気持ちになりました。お母さんは料理をつくったり洗濯をしたり、いつもいろいろなことで忙しく、赤ちゃんのそばにいるけれど一対一で向き合う時間というのは意外に少ないので、そういう親子でともに幸せになる時間をつくることも大事だと思います。
 最近は子育て支援センターなど、親子で一緒に過ごせる場所が増えましたよね。そこは実はお母さんのための居場所でもあるんですよ。一生懸命頑張っているのに誰もほめてくれなかったり、心が苦しくなったり、つらくなったり、孤独を感じたら、とにかく赤ちゃんを連れて一緒に行ってみてください。心配ごとでも悩みごとでも、何でも話をしてみてください。恥ずかしいことは何もありません。私たち人間はもともと群れて子育てをしなければ、孤独になって寂しくなる動物なのですから、大いに悩みを打ち明けて、頑張った自分をほめてもらいましょう。

この記事は、あそびのもりVol.49 Autumn/Winter 2017/2018の記事です。

Vol.49 Autumn/Winter 2017/2018

他のVol.49 Autumn/Winter 2017/2018の記事